肺胞蛋白症はその成り立ちから以下のように分けられています。
成人の肺胞蛋白症のうち9割がこのタイプです。患者数は人口100万人あたり6〜10人と非常に少なく、肺胞蛋白症が希少肺疾患と言われる理由はここにあります。肺胞マクロファージは、血液の中のある種の白血球(単球)が肺胞で変化して生まれます。その時に絶対必要なのが顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)という物質です。これはサーファクタントを作り出す細胞から放出され、単球が未熟マクロファージを経て肺胞マクロファージへ変化することと、マクロファージが盛んにサーファクタントを処理することを促します。
すなわちGM-CSFは例えて言えば肺胞マクロファージの“変身・活性化ホルモン”です。ところが自己免疫性肺胞蛋白症では、GM-CSFに対する抗体というものができます。抗体とは特定の物質に結合する性質を持つ蛋白質で、結果的にGM-CSFがはたらかなくなり、単球が肺胞マクロファージへ変化することなく、かつ数少ない肺胞マクロファージもサーファクタントの処理が十分にはできません。
ここまでの仕組みをまとめると
となります。抗体ができる根本的な原因はまだ分かっていません。
続発性とは他の病気の結果起こるという意味です。すなわちある種の血液疾患や呼吸器感染症にかかった場合や体の抵抗力が低下した場合、あるいは粉じんを大量かつ急速に吸った場合などに肺胞蛋白症が発症することが知られています。いずれもGM-CSFに対する抗体とは無関係に、種々の原因で肺胞マクロファージのはたらきが低下することが原因です。患者数は人口100万人あたり、0.6人程度とさらにまれです。
遺伝子に異常があるために、多くは生後間もない時期に肺胞蛋白症を発症します。その一部はやはりGM-CSFのはたらきが発揮されずに発症します。