肺は空気を取り入れて酸素を血液の中の赤血球に渡し、一方で炭酸ガスを血液から出す臓器です。その働きをするもっとも小さな組織は袋状の形をした「肺胞」です。肺は3〜6億個の肺胞を含み、いわば肺胞の固まりです。
その昔この病気が見つかった時に肺を顕微鏡で見ると、肺胞の中にピンクに染まった物が一面にたまっていて、最初「蛋白」のように見えたため、肺胞蛋白症という病名がつけられました。
その後それは、「表面活性物質」、別名「サーファクタント」であることが分かりました。すなわち肺胞蛋白症はいわば「サーファクタント貯留病」です。
肺胞はとても小さな袋であるために、膨らみにくい性質があります。例えれば風船が小さいうちはとても強く息を吹き込まないと膨らまないことに似ています。肺胞が膨らまないと空気が入らず、正常な呼吸ができません。
サーファクタントは肺胞の表面を薄くおおってその“張り(表面張力)”を弱め、肺胞が膨らみやすくしています。いわば石鹸水からシャボン玉ができやすいことと似ています。
サーファクタントは肺胞の一部の細胞で作られ、肺胞の中で“ほど良い”量に調節されています。その調節を主に担当しているのは肺胞マクロファージという「掃除屋細胞」です。肺胞マクロファージはサーファクタントを取り込んで、細胞の中で分解しています。何らかの理由でこの肺胞マクロファージの働きが悪いと、サーファクタントの処理が滞り、肺胞の中にサーファクタントがたまるようになります。その結果空気が十分肺胞に入らずに血中の酸素が下がって来ます。これが多くの場合の肺胞蛋白症の成り立ちです。肺胞を広げる使命を持つサーファクタントが、一転して呼吸の邪魔をするのは何とも皮肉なことです。